神道とは

日本の古代原始信仰は蛇信仰だったと、民族学の権威である折口信夫氏もふれているが、蛇信仰の研究で有名な吉野裕子氏は「天皇家のルーツは蛇である」とはっきり断言しておられる。つまり神社信仰のルーツは蛇信仰ということである。蛇は祖(おや)神(がみ)で外見が男根に似ていることから、生命や精力、エネルギーの源と見なされたこと、脱皮することから生命の再生、更新の象徴と見なされたこと、マムシのように猛毒を持って一撃のもとに相手を倒すことから、人間の力を越えた恐ろしい力を持つ存在として崇められてきたというのである。さらに驚くべきことは、しめ縄は蛇が交合する姿であり、鏡餅は蛇がとぐろを巻いている姿であるという。古代において蛇は「カカ」とか「ハハ」と呼ばれており、神という語の語源も「蛇(か)身(み)」という。日本には様々な外来の宗教もやってきたが、あらゆる宗教と習合しながら蛇信仰は常に基底をなし、日本文化の中や「祭り」として継承され現在に至っている。いわゆる「日本教」といわれるものの根本は蛇信仰である。

 キリスト教において、蛇はサタン(悪魔)と呼ばれ、神に敵対する存在である。世界の歴史は、蛇信仰を基底とする多神教と、キリスト教を代表とする一神教との対立の歴史であった。古代を席巻していた蛇信仰が滅ぼされ、現代はキリスト教が世界をリードしている。このような歴史的背景の中にありながら、日本における蛇信仰は島国という地の利からか、延々と温存され続けた。蛇信仰は単に古代信仰というだけでなく、しめ縄や鏡餅あるいは全国各地に残る「祭り」など、日本の文化であり伝統であって現代にも息づいているのである